占い師の、とある一日

占い師は、どんな毎日を過ごしているのでしょうか?

マスコミが伝える有名占い師とは違う、もっと普通の女性占い師の一日をのぞいてみたいと思いませんか?

このストーリーは、複数の占い師の実体験をもとに再構成してあります。

【占い師、アヤ(仮名)二八歳の、とある一日】

日野アヤの一日は、目覚ましの鳴らない朝から始まる。ベッドから起きてテレビのスイッチをつける。ちょうど朝の占いコーナーがはじまったところだった。

トーストを焼き、コーヒーをいれる。二年前、派遣の事務員として働いていたころは、朝食を食べる余裕もなくあわただしくマンションを出てギュウ詰めの電車で通勤していたのが信じられない。

「今日のおひつじ座は、十二位で、ラッキーフードは、蜂蜜トースト? おしい!」アヤは、イチゴジャムをぬったトーストをほおばった。

雑誌やテレビの占いは、占い師が監修していても、実態はほとんどライターが書いている。だから、アヤも今は、お遊びと思って見ている。派遣で働いていたときは知らなかったので、真剣に朝の占いを見ていた。

テーブルの上の、通販会員用の冊子を手に取り、ぱらぱらとめくる。「ちゃんと占い師が書いてる占いもあるんだけどね」通販会員冊子の最後のページの『今月の占い』は、アヤが連載している。

テレビや雑誌などの占いは、有名占い師にならないと依頼されないが、地域のフリーペーパーや、インターネットのウェブマガジンなど、無名占い師が活躍できる媒体はいくらでもある。ただし原稿料もピンキリだ。

「十二星座、各百文字の合計千二百字で五千円。紙媒体の仕事としてはかなり安いけど、占い師『アーヤ』って名前を出してもらってるし」

占い雑誌の占い記事は、出版社によって違うが、ベーシ1万円程度だ。イラストも入るので、文字数は多くない。通算すれば原稿用紙一枚あたり五千円くらいになる。定期的に雑誌に書くことができればいいが、なかなかそうはいかない。

 

現在の占い原稿の主流は、インターネットと携帯だ。

コーヒーを飲み終えたアヤは、パソコンを開いた。メールで占い原稿の依頼が届いていた。携帯占いサイト「占いの花園」の占いメニュー。「彼はあなたのことをどう思ってる?」とか「あなたの今週の恋愛運気」などの項目ごとに、回答文を書く。一つの回答文は、二百文字程度。原稿料は会社によって違っていて原稿用紙一枚当たり、六百円から千二百円くらいまでかなりの幅がある。

紙の原稿もウエブ原稿も、原稿料から一割の源泉税が引かれる。

「さて、仕事にとりかかりますか」

アヤは、昼までに、回答文を二十パターン、四千文字(原稿用紙換算十枚分)の原稿を書き上げた。

さっと着替えて身支度をすませ、マンションを出た。今日は、占い師の友達と情報交換を兼ねたランチなのだ。

待ち合わせした駅に着くと、町田翔子(仮名)が改札前で待っていた。二八歳で同じ年の翔子とは去年、フラワーアレンジメント講座で知り合った。お互い占い師だとわかって驚いたが、それから急速に親しくなった。

翔子は、明るい花柄のワンピースにパンプス。休日のOLといった感じだろうか。

「アヤ そのネイル、かわいい!」

アヤの指先のレモンイエローのネイルアートを、翔子がめざとく見つけた。パソコンのキーボードを打つのであまり長くはできないが、派遣で働いていたときはそもそもネイルアートなんてできなかった。

お互いをながめて思う。

「あたしたちって、占い師に見える?」

「見えないと思う」

イタリアンランチのある、ファッションビルヘ向かう。平日なのに賑わっている。若い女の子もいるし、おばさまグループもいる。このなかに自分たちのほかに占い師がいるかもしれない。占い師は見た目じゃわからない。翔子と会ったときだって、フラワーアレンジメント講座で、占い師に会うとは思わなかった。