夜の電話占い

夕食用の食材を買ってマンションに戻った。今日の夕食は温野菜たっぷりのパスタ。ひとり暮らしだから、自分なりに健康に気をつかっている。

夕食後、寝るまでの時間は、電話占いの時間だ。アヤは、電話占いの会社に、占い師として登録している。

電話占いをしたい時間に、転送設定をすると、占い会社にかかってきた電話が、占い師の自宅電話に転送されるようになっている。

対面鑑定、電話鑑定、メール鑑定のいずれも、個人で受けるのと、占い会社経由で受ける方法があるが、占い会社経由だと当然マージンを取られる。

電話占いの場合、顧客は二十分で三千円を払うが、アヤが電話占いの会社から受け取るのはそのうちの三割弱の七百円だ。

電話が鳴った。転送電話の発信音を確認してから応答する。

「はい、占い師アーヤです」

「あの、恋愛運をみてもらいたんですけど」

話を聞きながら電話片手に、タロットカードをまぜあわせる。

占い会社経由だから、おかしな客はこないし、占い師本人の電話番号が公開されることもない。マージンがもったいないと独立していった占い師が、ストーカー的な客に悩まされ、鑑定料金の未払いに困り果て、さらには広告料やら電話転送代などの設備費が思った以上に大変で、結局、電話占いの会社に戻ったという話を聞いたことがある。

二時間待機している間、ほとんど続けて休みなく電話がかかってきた。午前零時を過ぎたところで、転送設定をオフにした。時給にしたら二時間で約四千円になる。

「今日の仕事はこれで終わり」

寝る前にメールをチェックすると、電話占いの会社から、占い師忘年会のお誘いメールが届いていた。

「去年の忘年会はすごかったのよね。一次会はみんなお上品に飮んでいたけど、二次会で、髪をつかみ合っての大げんかになって」

占い師は個性的な人が多い。だから、おもしろい。

アヤは、出席します、という返事を出した。

新規メールが届いた。以前、対面鑑定したお客からのメールだった。

『アーヤ先生! また占いお願いします!』

正直、先生って呼ばれるのは慣れない。だけど、「ありがとう」つて感謝される仕事だということに、誇りを持っている。

悩みを持つ人がいなくならない限り、占い師という仕事もなくならない。

アヤは、返信メールを送ってから、ネットショップで占い関連の本を数冊注文した。翔子に教えてもらったホラリー占いの専門講座に行くので、その前に予習しておくつもりだ。ホラリー、ジェオマンシー、六壬、梅花心易……まだまだアヤの知らない占いがたくさんある。

シャワーを浴び、タロットカードを使った瞑想をしてから、ホラリー占いの本を手に、ベッドに入った。

アヤは、小さい頃から、占いやおまじないが好きな、ちょっと変わった子だった。人と同じことをしようとがんばっていたこともあったけれど、占い師になったらそんなこと、気にならなくなった。

占いを学ぶことが楽しい。人や自分を占うことが楽しい。

占いに関わる業界にいることがうれしい。

占い師になって本当によかった!と心から思う。

結婚しても家族が増えても、これからもずっと占い師を続けていこうと思っている。今は若い女の子からの恋愛相談が多いけれど、嫁姑問題や子供の問題や、年齢を重ねていけば、その年代ごとにいろんな悩みがあるはずだからだ。

占い師、日野アヤ、28歳。まだまだ占い師として修行中だ。